其れは古の詩であり
今を謳うものであり
遙かなる歌でもある
決して消えることのない
愛の物語

 少年が在った
 力無き少年だ
  少女が在った
  詩持つ少女だ

互いの名も知らず在った
力無き者と詩持つ者は
交わる道理もないからだ

やがて齎された邂逅は
とある戦争の末端
 打ち倒されたものと
  癒すものとしての出会い

 少年の体は傷つき壊れかけていた
  少女の心は傷んで毀れかけていた

  何故人は傷つけあうの
  手を取り合っては生きていけないの
  共に笑いあうことも許されないの
  こんな世界でも守りたいの
  まだ毀れるわけにはいかない
  この世界を残しては逝けない
  どうか世界を護るために力を貸して

 人は自分を守るために他人を傷つける
 体も心もお構いなしに
 誰もが本当はそれを嘆いている
 世界がそれを望むはずもない
 世界の傷を癒しに行こう
 世界の端で寝てなんかいられない

少年と少女は手に手を取り合って
世界の端から逃げ出した
目指すは世界の中心
星が謳うというその場所

  詩持つ少女は追われて逃げた
 力無き少年はひたすら走った
二人は互いが互いを支えあう

二人を匿う優しい老夫婦が在った
二人を厄介者呼ばわりする村長が在った
二人を逃がそうとする恋人たちが在った
二人を拒む街の衛兵たちが在った
二人を祝福してくれた対の子供が在った
二人を妬んだかつての友が在った

それでも二人は世界の中心へたどり着いた

 少年には聞こえなかった
  少女には聴こえてしまった

星が謳う嘆きの詩

  少女は少年に歌にして聞かせた
 少年は静かに耳を傾けた
  星がどれだけ深い悲しみに満ちているか
 世界の涙が海のように広がっていること

  そして少女は謳う
  悲しまないで
  必ずなんとかするから
 そして少年も歌う
 泣かないで
 絶対なんとかするから

世界に幸せを齎す音を捧げ奉らん!

 少年は歌う
  少女は謳う
響きは重なり合う

一つの
   歌
    詩
     になる

想いが同じ
     歌
      詩
       を
        歌えば
           謳えば
              それだけで共鳴し合える

  詩に悲しみ込めれば
  悲しみが広がるだけ
 涙して歌えば
 涙を誘うだけ

それなら喜び重ねて奏でましょう
  広がるのは歓喜
 心には笑顔を
痛みを消し去る共鳴をここに

hこの熱き
a想いの力で
r星の生命たちが
t世界に
e共感し
s祈りを捧げ

y闇を打ち払い
o憎悪を打ち消して
r躍動の
a力を得る

気づけば戦は終わり
二人の
   歌
    詩
     は
街中から聞こえるようになっていた
その中には微かだが確かに
星の謳声も聴こえている・・・