千世ノ宮編

 ルウシャは、ふわふわと星へ戻ってきていた。まだまだ旅は始まったばかり。気を抜いてはいられないのだ。

 ふい、と何かを感じて、そちらへふわふわと漂っていった。心ばかり気が入っていて、体の方はふわふわだった。きっと重力が変わったせいだ。

「こんにちわ」

「!?」

 話しかけられて驚いてそちらを見ると、ルウシャの体と同じかそれ以上にふわふわの雰囲気の女性がそこにいた。

 ルウシャは半身とはいえ体は意志寄り。ルウシャが見えるということは、その人も星の意志に他ならなかった。

「お、お初にお目にかかります。創歐ノ輔様より使わされました、意志渡りの巫女、ルウシャと申します」

「創歐ノ輔……。聞いたことが、あるような……。あぁ、レーヴァテイルに恋したお方ね」

「あの、貴女様は……」

「私は千世ノ宮。あまり大きなものは生み出せないけれど、細々なしたものを生み出すのが得意なモディファイアよ」

 ルウシャは千世ノ宮の周りに小さなものがいくつも飛び交っているのが見えた。それらはなくても困らないが、あれば豊かになれるもののように見えた。

「私は、それも大切なことに思います」

 透けて見えたものに、率直な感想を言ってしまったが、言ってしまったことに気づいてルウシャははっと口をつぐんだ。

「も、申し訳ありません! 出過ぎた物言いでした……」

 がばっと土下座をする。

「いえ……。いいのよ。顔を上げて頂戴」

 ルウシャはその声にそろりと顔を上げる。

「そう言ってくれて、ありがとう」

 花のような笑みが、そこにあった。

「私はあまり上の方の方々と会ったことがないのだけれど、自分のしていることが本当に役に立っているのか自信がなかった。確かにやれと言われるからやっているのだけれど、細々とした面倒なことを押し付けられているようにも感じていたの。でも、ルウシャちゃんの言葉で晴れたわ。私のやっていることを、私が意味がないと感じていたら、それは本当に意味のないことになってしまう。私だけでも私の作ったものに意味を持たせなければいけないのにね。そして、もう一人その意味をちゃんと知ってくれている人が、確実にいるのだから」

 千世ノ宮は、幻を抱きしめるように、腕を折った。

「渡りの行はまだ続くのね? 今度一緒にお昼寝しましょう」

「はい、きっと」

 ルウシャは頭を下げて、その場を飛び立っていった。



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